脳や脊髄にインプラント、神経障害を治療(下)

 ニューロモジュレーターの導入にはいくつかの関門がある。数種類の障害の治療における安全性や効果が示されているのに、選択肢として提示されるのは、体内へ装置を入れなくてよい薬物などによる治療が失敗した後になってようやくというのが一般的なのだ。

 体内への埋め込みは複雑な手術になる場合もあるうえに、装置自体も高価だ。脳深部電気刺激装置は約5万ドル、脳以外の部位の装置はもう少し安くなる。この価格に手術費用は含まれていない。

 治療の結果は感動的だ。しかしミネアポリス近郊にあるメソジスト病院に勤務し、フォーク氏を担当した脳神経外科のリチャード・ベイナ医師は「利益はそれほど多くない」と述べる。この技術を知っている医師の数が十分ではないうえ、現在の保険による補填率では、もっと簡単な処置の方が利益が多くなるというのだ。

 意外かもしれないが、脳外科手術が危険だからといって手術を思いとどまる患者はほとんどいないという。おそらくパーキンソン病の症状を抱えた生活にうんざりしており、他の治療が失敗するのを見てきているからだろうとベイナ医師は言う。

 脳外科手術にためらいはなかったと、フォーク氏は話す。「震えはとてもひどかったので、とにかく治したかった」。フォーク氏の成人した子どもたちも躊躇しなかった。「子どもたちは、座って震えているだけの私を見ていられなかったのだ」。フォーク氏は、薬物治療の投薬量の3分の2を減らすことができ、処置は保険でカバーされたと言って、自分が受けた処置を他のパーキンソン病患者にも強く推薦している。

 埋め込み式心臓治療装置の費用は、企業間の競合、数の増加、技術の進歩によって引き下げられた。ニューロモジュレーターでも同様のことが起こる可能性はある。この装置から恩恵を得られるかもしれない人々――パーキンソン病、震え、てんかん、慢性うつ病、慢性の痛みなどに苦しむ人々――のうち、現在装置を手に入れることができるのはほんの少数にすぎないと、アナリストのウォールド氏は述べる。

 「私に言わせれば、ニューロモジュレーション、ひいては神経学の世界全体が、心臓病学の10年前の段階にある。伸びる余地はまさに膨大にある」とウォールド氏は話す。

 ニューロモジュレーション・システムでは、ほとんどの装置で同じ汎用部品が使われている。パルスジェネレーター、神経に接触するワイヤー、埋め込み式電池などだ。電池は数年ごとに交換する必要がある。今のところ、脳ではなく背骨に埋め込む方式が一般的だ。

 ミシシッピ州ハティズバーグの麻酔担当のトッド・シッツマン医師は、この10年間に、慢性的な痛みで苦しむ数百人の患者にこの装置を使った。

 「患者の目から見て効果があるかって? 疑う余地はない。一定の安らぎと、生活らしい生活を取り戻してやれる治療だ」とシッツマン医師は述べる。同医師は全米疼痛財団の理事を務めている。

 各企業はすでにこれらの装置の新たな応用例の開発を推し進めている。可能性として有望なのは、うつ病、強迫性障害、勃起障害、外傷性脳損傷、肥満、狭心症、失禁、耳鳴りなどの病気の治療が考えられている。

 セント・ジュード・メディカル社傘下のANS社チャベス社長によると、これらの可能性を米国や日本、ヨーロッパでの高齢化と合わせて考えれば、装置の値段が高いといったような阻害要因は一時的なことにすぎないだろうという。

 現在、フォーク氏の額の生え際には2つのふくらみがあり、頭蓋骨に開けられた直径2センチ弱の2つの穴をふさぐようにしてプラスチックプラグが埋め込まれていることを示している。手術は愉快なものではなかったが、薬物治療の投薬量が大幅に減り、最もひどい震えはなくなったとフォーク氏は語る。

 今では何もかもが前よりも簡単にできるようになった。以前のような手の震えがなくなったので、フォーク氏はコンピューターマウスを操作することもできる。

 「ベッドから出るという動作でさえ、楽にできるようになった」とフォーク氏は語った。

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